第3回てんかんをめぐるアート展in横浜

障害のある方の暮らし

社会モデルについて
 「この国に生まれたるの不幸」。この言葉が生まれて、今年でちょうど100年になります。 これは、日本の精神医学界の草分けである呉秀三が精神障害者の生活調査を行った際の言葉で、障害者が生きづらいのは障害そのもののせいではなくて世の中のありように原因があるのだ、という呉の実感がこもっています。そして、ここにはすでに、障害を個人の要因に帰するのではなく社会の問題として捉える=社会モデルの視点が存在しています。

 WHO(世界保健機関)が1980年に発表した『国際障害分類』では、障害を“機能(障害・疾病がある)”“能力(そのためできないことがある)”“社会的不利(社会生活上不利益を被る)”に分類しています。それまで『障害』をとらえる考え方の主流であった医学モデルがこの内の“機能”に焦点を当てるのに対し、社会モデルでは“社会的不利”(の軽減)を問題にします。
 『国際障害分類』は、2001年に『国際生活機能分類』に発展しました。これは、障害だけでなく、妊娠・高齢・ストレスなども含めたすべての人間の“生活のしづらさ”を対象としています。この“生活のしづらさ”を個人に帰責せず、合理的配慮により軽減する責任が社会の側にあるというのが、社会モデルの考え方です。
 障害を社会の問題として捉える=社会モデルを考える際に気をつけるべき点は、医療や福祉に携わる『支援者』も社会を構成する一部である、ということです。つまり私たちの行う支援は、時と場合によっては、当事者の“社会的不利”を温存・助長する可能性があるのです。
 「この国に生まれたるの不幸」。この言葉が生まれて、今年でちょうど100年になります。 先日、某私鉄電車で、こんな車内放送を聞きました。「ベビーカーをご利用のお客様は、周囲の迷惑にならないよう配慮をお願いします」。一瞬耳を疑いましたが、同内容の貼り紙が車内にあったので、聞き間違いではなかったようです。 「この国に生まれたるの不幸」…。
著:第3回てんかんをめぐるアート展
企画委員会
身体障害者の暮らし
 身体障害のある方は障害のある方の中で一番多く、約400万人近くいます。日本に住む人の1000人中およそ30人に身体障害があると言われています。
 身体障害のある方の暮らしといっても一概には言えません。
年齢を重ね身体の動きに不自由が出て身体障害者手帳を取得した人と、交通事故などの理由で下半身麻痺などの障害を負った人と、出産時のトラブルなどで脳性麻痺の障害がある重症心身障害児者の暮らしは、それぞれが大きく違うはずです。視力・聴覚障害の方も内部障害の方も身体障害のある方に数えられます。
 重症心身障害児の発生率は人口1000人当たり0.3人と言われ、在宅の重症心身障害児者は全国に約25000人いると推測されるそうです。
重症心身障害児者は、身体の不自由と知的の障害があり、中には医療的ケアが日常必要な超重心と言われる方もいます。
 在宅の重症心身障害児者は、移動や、食事の介助、排せつなど主に家族の支援により生活を送っています。小学校入学前は療育センター、6歳から18歳までは養護学校や特別支援学校で昼の時間を過ごし、高校卒業後は、通所施設や作業所、生活介護事業所などに通う方が多いようです。最近は放課後の居場所、ガイドヘルパー、入浴サービス、訪問介護、ショートステイセンターなどのサービスも徐々に増えてきましたが以前家族の負担は大きいです。数は少ないですが、重症心身障害者が住むグループホームもできてきています。生育の中で、もしくは主たる支援者である家族の高齢化に伴い、入所施設に生活の場を移す方もたくさんいます。
 重症心身障害児者も含む身体障害のある方は、障害によりできないこと、支援が必要なことはもちろんありますが、障害のないと言われている方と同じく年齢を重ね、時代を感じながら生きています。多くの身体障害のある方は、あふれるばかりの感情でコミュニケーションをとろうとしてくれているし、一人一人当たり前ですが豊かな個性を持って生きています。

著:NPO法人みどり福祉ホーム  
みどり福祉ホーム 所長  荒木 傑
知的障害者の暮らし

 統計上、日本には約74万人の『知的障害者』がいます。知的障害者ってどんな人?と聞かれたら“療育手帳を取得している人”というのが答えです。では療育手帳はどんな人がもらえるの?と聞かれたら“知的障害がある人”と答えるしかありません。 IQがどうとか、ADLがどうとか、『判定基準』みたいなものもあったりしますが、別にはっきり線がひかれているわけではありません。というか、線などひけません(そしてもうひとつ、ある人が『障害者』であるのは、いまの社会のありようがその人が生きる上で不便な仕組みになっているからだ、という視点も忘れてはなりません)。
 ざっくり言うと、知的障害者は、知的な発達がゆっくりな方です。ものごとを頭の中で整理したり順序良く並べたりするのはあんまり得意ではありません。自分の考えや思いを言葉で表現するのも苦手なことが多いです。けれど、そういった苦手さ加減や不得意さ加減は人それぞれです。だから当然、暮らしのありようも様々です。一人暮らしして会社で働いてる人もいれば、結婚してる人もいる。グループホームに住んで通所施設に通ってる人もいるし入所施設で生活してる人もいる。そして、『障害』の『程度』はどうであれ、ひとりひとりがなにかを感じ、なにかを発し、一度きりの生を生きています。

著:NPO法人活動ホームしもごう
戸塚障害者地域活動ホームしもごう
施設長 甘糟 直行
発達障害を持つ方のくらし

 発達障害を持つ方のくらしは、規則正しいものであることが多いです。毎日同じ時間に同じ活動をするといったことから、特定の銘柄のものしか飲食しないようなことまで、決まりごとの種類や数は人によって違いがあります。 これは、パターン化することで見通しを持ち、安心を得ようとしているためと考えられています。パターンの変更が受け入れられず、パニックを起こす人も珍しくありません。だからと言って、絶対に変更が受け入れられない訳ではないのです。 他の方法で見通しを持つことができれば変更することは可能になりますが、そのためには周囲の人のサポートが必要です。
 また、規則正しさとは対極にある昼夜が逆転してしまっている人もいます。これは、興味関心が高いことに没頭してしまい、生活リズムを乱すことによって生じます。セルフコントロールの弱さ・難しさもこの障害を持つ方の特徴の1つであり、サポートが必要な要素です。
 発達障害を持つ方の生きづらさは、外から見えるものではありません。見た目からは理解されにくいのですが、実は大きな生きづらさを抱えていて、そのギャップに苦しむことが多いのです。発達障害を持つ方たちを理解するために、まずは彼らの視点に立って物事を見てみませんか?

著:社会福祉法人横浜やまびこの里  
ナビス氷取沢 支援係長 小松 博昭

↑ PAGE TOP